環境中の放射性物質分布をパノラマで可視化-次世代型モニタリングカー「iRIS-V」を開発-

国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉 敏雄、以下「原子力機構(JAEA)」という。)の福島研究開発部門廃炉国際共同研究センター(CLADS)〔福島県双葉郡富岡町〕では、車両に放射線源の位置推定が可能なコンプトンカメラ を複数個(144個)配置することで全方位型の3次元のコンプトンカメラシステムとし、レーザ光を用いた3次元距離測定センサ(3D-LiDAR)や GPS システム等による空間・位置情報システムとを統合した放射線イメージングシステム車(以下、「iRIS-V」という。)を開発しました(図1)。

福島県内の帰還困難区域や1Fサイト内で作業する方々にとって、作業環境の線量率や環境中に飛散した放射性物質の分布を把握することは、被ばく線量の低減や除染計画の立案の観点からとても重要です。しかし、従来のサーベイメータを用いた放射性物質分布の測定では放射線の飛来方向が分からないため、放射性物質のある場所やその広がりを把握するためには、広範囲エリアの測定をする必要があり、測定に時間がかかりました。また、作業現場では除染や解体が日々進められていることから、周りの空間線量率や放射性物質の分布を迅速にモニタリングすることが求められています。

この車輌には、多数の小型軽量コンプトンカメラが車輌周囲に向けて配置されていることから、測定場所に移動してあらゆる方向の放射性物質の分布をパノラマ的に可視化することができます。また、車両が走行したルート上の空間線量率を地図上にマッピングできるようにしています。

今後、1F サイト内や帰還困難区域等での全方位的な放射性物質の分布測定を行うにより、廃炉作業や除染作業の円滑な進捗に貢献できると考えています。

  • 図1 統合型放射線イメージングシステム車iRIS-V