課題番号:汚染水-201
段階:Design
廃炉プロセス汚染水対策
検討対象地下水・汚染水管理
課題地下・建屋水位コントロール

ニーズ

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① 建屋止水を行いたい。
時間軸:汚染水対策中期

望ましい状態とその理由

現在、山側から海側に流れている地下水が、原子炉建屋等に流れ込み、建屋内等に溜まっている放射性物質を含む水と混ざることなどで汚染水が増加している。汚染水の増加を防止・抑制するためには、建屋の止水(地下水流入箇所の止水)がなされることが望ましい。
汚染水の増加を防止する観点からは、建屋に流入する水を一切止めることが最終目標である。
地下・建屋水位コントロールによって長期的に建屋内の環境を一定に保つことが望ましい。
デブリ取り出し時に破砕片やヒューム等の飛散を防止するために水スプレイを用いることが想定されるため、2次的な漏えいの回避、汚染エリア拡大防止の観点から建屋からの流出を防ぐことが望まれる。

理想に対する現状

建屋周辺は高線量であり、かつ、地下水の流入箇所が特定されていない。
トーラス室内からの止水作業は遠隔作業となるが、流入が想定される貫通部などの狭隘部はロボットも入ることができず、ライトを当ててもよく見えないという現状がある。
1~4 号機周辺のフェーシングによる雨水流入対策に加え、局所的な止水対策として、3 号機を対象に建屋貫通部(配管等)と建屋間ギャップ端部への止水対策(充填や地盤改良等)が検討されている。

解決すべき課題

仮に、流入の場所、規模、形状、周辺の特性等の情報が得られた場合、それらに基づき、適切な止水ができる技術を準備しておく必要がある。
一方、流入箇所に係る情報が十分に得られない可能性も考えられるため、流入箇所やその特徴を特定できなかった場合においても適用可能な止水技術の開発も必要である。
トーラス室内からの止水に関しては、例え流入個所が見つかって止水したとしても、別の穴から流入するため、イタチごっこになる恐れがある。一方、建屋外からの止水については、建屋全体を囲むことが考えられるが、原子炉建屋の底まで含めて止水できるか否かと言う点で困難性がある。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

特になし

検討されている研究課題

特になし
② 建屋間ギャップ止水を行いたい。
時間軸:汚染水対策中期

望ましい状態とその理由

建屋間ギャップとは、原子炉建屋周辺の建屋同士を隣接して建設する際に生じる外壁間の隙間のことで、配管等の貫通部が存在する(図参照)。
原子炉建屋タービン建屋の間でも汚染水の流入が生じていると考えられる。この建屋間ギャップ部の貫通部は建屋への地下水流入の主要因の一つと考えられ、局所止水対策を実施できることが望ましい。

理想に対する現状

建屋内は高線量であり、かつ、流入箇所が特定されていないという課題が存在する。
1~4 号機周辺のフェーシングによる雨水流入対策に加え、局所的な止水対策として、3 号機を対象に建屋貫通部(配管等)と建屋間ギャップ端部への止水対策(充填や地盤改良等)が検討されている。
具体的には、このギャップ端部にボーリング削孔、そこにモルタル等を充填することで止水部を構築する対策が検討されている。5,6号機での施工方法や材料等の試験を実施し、他の廃炉作業と調整しつつ3号機、その他号機へと展開していく計画である。

解決すべき課題

仮に、流入の場所、規模、形状、周辺の特性等の情報が得られた場合、それに基づき、適切な止水ができる技術を準備しておく必要がある。
一方、流入箇所に係る情報が十分に得られない可能性も考えられるため、流入箇所やその特徴を特定できなかった場合においても適用可能な止水技術の開発も必要である。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

特になし

検討されている研究課題

特になし
③ 汚染水の増加量を抑制したい。
時間軸:汚染水対策中期

望ましい状態とその理由

現在の廃止措置において、コストの多くは汚染水処理が占めている。このコスト低減のため、汚染水の増加量は極力小さくできることが望ましい。
また、汚染水の貯留タンク、処理水の貯留タンクの設置エリアを低減することができれば、今後の燃料デブリ取り出しに向けて作業スペースをより確保しやすくなる。

理想に対する現状

陸側遮水壁、サブドレン等の重層的な汚染水対策により、原子炉建屋周辺の地下水位を低位で安定的に管理するとともに、建屋屋根の損傷部の補修や構内のフェーシング等により、降雨時の汚染水発生量の増加も抑制傾向となり、汚染水発生量は、対策前の約490m3/日(2015 年度)から約130m3/日(2021 年度)、約90m3/日(2022年度)まで低減した。※ただし、2022年度は例年に比べて降雨量が少なかった。
2025 年内には100m3/日以下に抑制、さらに2028 年度末頃には約 50~70m3
/日程度に抑制することに向け、他の廃炉作業等との干渉を調整しながら、屋根の補修やフェーシング範囲の拡大が進められている。
滞留水位と地下水位の差を小さくすることで、流入量を減らすことは可能であるが、水位差を小さくすることは建屋周辺への汚染水の流出リスクを高めることとなることに留意が必要である。
汚染水流出は必ず避けるべき事象であるため、現状では、ある程度の流入は許容するとして、サブドレンの設置水位を建屋内水位の+800mm程度に維持している。
今後は、「地下水バイパス/サブドレン/陸側遮水壁の維持管理運転を継続し、建屋周辺の地下水を低位で安定的に管理」するとともに、「雨水浸透防止対策として、陸側遮水壁内側(山側)の敷地舗装及び建屋屋根破損部の補修を実施」するとしている。

解決すべき課題

大雨時の急な地下水位の増量に対応できるようなシステムの構築が必要である。
凍土壁の経年変化管理・保全マネージメントの検討や凍土壁に代わる代替策の検討が必要である。特に、凍土壁に代わるコスト面に優れた代替策の検討が求められる。他にも、汚染水対策の効果を中長期にわたって維持するため、サブドレン設備や既存の水処理設備(SARRY、ALPS 等)など、各設備の定期的な点検、更新を確実に行わなければならない。そのためには、経年変化に伴う設備機能の低下、交通荷重による金属疲労や自然災害で生じる配管の損傷など様々なリスクを想定し、監視・早期復旧対策の体制強化や安定運用に向けた予備・代替品の調達手配等を整え、計画的に維持管理・設備更新を進める必要がある。
なお、ここで記載しているのは、「完全止水=汚染水増加量ゼロ」の達成が困難な現状を鑑み、完全止水ではなく「少しでも汚染水増加量を抑制しよう」とする考えに基づいたものである。
実際の工事に際しての課題としては、「敷地舗装をする際の制約(作業エリアの放射線環境、既存設備の撤去、等)」と「建屋雨水対策工事における制約(既存設備の撤去、汚染された配管の閉止方法、等)」が挙げられている。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

特になし

検討されている研究課題

特になし
④ 汚染水地下水移行を管理したい。
時間軸:汚染水対策中期

望ましい状態とその理由

滞留水濃度が低下する一方、 地下水中Sr-90やH-3はあまり低下せず滞留水を超える濃度すらあり、環境漏えいリスク低減が重要なため、浅地中地下水放射性核種の動態把握、拡散抑制技術が望まれる。
なお、今後のデブリ取り出しや解体の方法も見据えた対策も望まれる。デブリ取り出しによって汚染源が変化することに伴い、汚染水の性状も変化する可能性に留意する。

理想に対する現状

地下水モニタリングは実施されているが、地下水位や放射性物質濃度の精緻な分布が把握できていない。

解決すべき課題

地下水・汚染水への合理的・体系的対処のためには、地下水の挙動を全体的に把握する必要がある。
また、建屋周辺の土壌に含まれる核種の移行を評価するためにも、建屋周辺の地下水挙動を把握する必要がある。
その上で、地下水の挙動を管理できる技術が望まれる。

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

特になし

検討されている研究課題

特になし

関連する課題

資料

関連サイト