課題番号:デブリ-220
段階:Design
廃炉プロセス燃料デブリ取り出し
検討対象取り出し工法・システム
課題閉ループの確立

ニーズ

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① 水位をコントロールする手段を確立したい

望ましい状態とその理由

2022年度から2024年度にかけて原子炉建屋滞留水を2020年末の半分程度に低減させることが目標となっており、滞留水を回収して浄化した後に冷却水として再使用する循環冷却系が成立している必要がある。
燃料デブリ取り出し時においてはデブリの加工等により液相部の放射能濃度が上昇する可能性があるが、これらの汚染水地下水への流出を防ぐために、原子炉建屋内の滞留水水位低下を進めるとともに、S/C内の水位低下について検討を進めることが望ましい。特に、1号機及び3号機のS/C内包水においては、漏洩時に建屋外へ流出しないレベルまで減らしたい。
S/C脚部の耐震裕度が低いことから、S/C内の水位を低くする方が望ましい。また、各号機におけるPCVの損傷状況や、地下水への冷却水流出を防止するために原子炉建屋内水位を地下水位よりも低く維持する必要性等の観点も考慮し、PCV内の水位を適切に設定して管理するとともに、燃料デブリの冷却やダスト飛散抑制の観点から安全が確保されることを確認することが求められる。
既設の循環水冷却・浄化システムとその冷却機能にどのような影響を与えるかについて、状態を監視しながら慎重に進められるよう、監視パラメータ、判断基準等を準備しておく必要がある。
長期にわたる廃炉工程では、様々な想定外の事象、状況が起こりうるため、それらに対応できる体制を構築しておくことが望まれる。

理想に対する現状

燃料デブリからの循環冷却水中へ溶出されると考えられる溶解性核種の除去技術や、循環冷却水系のフィルタに捕集された固形物の処理技術等を基に、PCV循環冷却系の構築について検討が進められている。
ベント管止水等に加えて、ジェットデフへの閉止板設置、D/W 内への堰設置等による止水技術の開発が実施された。
事故の影響により水位が通常運転時よりも高くなっている1, 3号機のS/Cの水抜きが計画されおり、測定範囲の広い水位計の新規設置に向けた対応が実施されている。

1号機のPCV 内水位に関する検討

現状のPCV内水位は約1.9mと推定されており、PCV底部の燃料デブリの大部分は水没していると考えられる。また、PCV内冷却水の真空破壊ライン(PCV底部から約1.1 m)やサンドクッションドレン管を経由したトーラス室への漏えいが確認されている。このため、PCV水位を真空破壊ライン以下に低下させた上でのPCVとS/Cとの間の止水技術(ベント管止水又はダウンカマー止水)の適用もしくは、止水を実施しない場合はPCV内水位をベント管付け根部以下で維持することが必要となる。また、どちらの対応を行うにしても燃料デブリを水中又は冷却水を掛け流しながら取り出す場合においては、サンドクッションドレン管を経由してトーラス室に流入する冷却水への対処が必要となり、サンドクッションドレン部にドレン受けを遠隔技術で設置すること等が必要になると考えられる。
ベント管止水又はダウンカマー止水を実施する場合、上述のとおりPCV内水位は真空破壊ライン以下に維持するため、PCV内に滞留する冷却水量は多くなく、仮にベント管取り付け部が破損してPCV 内の冷却水がトーラス室に流出した場合でも、トーラス室水位を地下水位より低く保つことが可能である。また、ダウンカマー取り付け部が損傷してPCV 内からS/Cに冷却水が流出することに備えた対策として、S/C内設置のポンプによる回収等を行うことで対応することが検討されている。
止水を実施しない場合、PCV内水位をベント管付け根部より低く維持することとなり、燃料デブリ取り出しは冷却水掛け流しの気中状態で実施することとなる。この際、一部の燃料デブリは気中に露出することになることが想定されるため、燃料デブリの崩壊熱や必要冷却水量等について事前に検討しておく必要がある。

2号機のPCV 内水位に関する検討

現状のPCV内水位は約0.3mと推定されており、PCV底部の燃料デブリの大部分は水没していない状態にある。また、S/C内の水位とトーラス室の水位が同程度となっていることから、S/Cからトーラス室への漏えいが存在すると想定される。ベント管止水又はダウンカマー止水を実施する場合、PCV内水位を上げることが可能となり、PCV底部の燃料デブリ取り出しは水中で実施できることとなる。この場合、PCV内からの冷却水流出時の想定については1号機と同様である。
止水を実施しない場合、PCV 水位は現状と同程度に維持することとなり、燃料デブリ取り出しは冷却水掛け流しの気中状態で実施することとなる。この場合、S/C を経由したPCV内からトーラス室への冷却水の流出を防止するために、S/C 損傷部位の同定や補修を行う必要がある。

3号機のPCV 内水位に関する検討

現状のPCV 水位は約4.2mと1, 2号機に比べて高く、PCV 底部の燃料デブリは既に水没している。
2022年10月からPCV取水設備の運転を開始し、S/C底部から取水することで原子炉注水と入れ替え、PCV水位低下に向けたS/C内包水の水質改善を実施している。
ベント管止水又はダウンカマー止水を実施する場合、上述の理由によりPCV 内水位を現状の1号機と同程度(約1.9m)まで低下させる必要があるが、燃料デブリを水中で取り出すことが可能となる。この場合、PCV内からの冷却水流出時の想定については1号機と同様である。
止水を実施しない場合、PCV 内水位をベント管付け根部より低く維持することとなり、燃料デブリ取り出しは冷却水掛け流しの気中状態で実施することになる。この際、一部の燃料デブリは気中に露出することになることが想定されるため、燃料デブリの崩壊熱や必要冷却水量等について事前に検討しておく必要がある。

解決すべき課題

滞留水中に含まれるα核種の性状を把握した上で、除去設備を設計・設置する必要がある。
現場情報およびその不確かさ、それを解決しようとする取組などに関する知見を集約し、想定外の状況や不測の事態が発生した場合に対応するための基本データベースを構築する必要がある。また、そのような集合知を開示することで、関連する検討課題において廃炉進捗を俯瞰的に捉え、廃炉工程全体の適正化や、研究を効率的に推進することが求められる。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

廃炉・汚染水対策事業原子炉格納容器内水循環システム構築技術の開発 [資料1] [資料2]
廃炉・汚染水対策事業原子炉格納容器漏えい箇所の補修技術の開発 [資料]
廃炉・汚染水対策事業原子炉格納容器漏えい箇所の補修技術の実規模試験 [資料1] [資料2]

検討されている研究課題

特になし
② PCV漏洩部を特定し、補修したい

望ましい状態とその理由

多重のバウンダリを確保するために、PCV下部補修等による止水の検討を進めることが望ましい。その際、PCV補修技術等もかんがみて、止水技術の適用による漏洩抑制と冷却水の循環・浄化系を組み合わせたシステムも含めた閉じ込め機能の在り方を検討することが望ましい。
止水を実施する際にも、PCV内から原子炉建屋内へ冷却水が漏えいした場合に備えるために、原子炉建屋滞留水地下水の間の適切な水位差の設定を検討することが望ましい。

理想に対する現状

ベント管内埋設による止水については、自己充填コンクリートによる1/1スケール模擬ベント管試験にて、流水下での施工性と0.4MPaまでの止水性能が確認された。
S/C内埋設による止水については、1/1スケール試験により、S/C損傷孔、クエンチャ、ストレーナの止水が可能なこと、及び水位制御に必要なS/Cガイドパイプ施工試験により施工成立性が確認された。
真空破壊ライン埋設による止水については、1/1スケール施工試験により、施工性と止水性能を確認するとともに、0.45MPaの水圧下で漏洩がないことが確認された。
トーラス室壁面貫通部等の止水については、高圧ジェット洗浄錆取りとウレタンゴム系止水材の組合せ工法の適用性があることが確認された。
3号機については、2022年6月に実施された原子炉注水停止試験の結果から、漏洩部がPCV新設温度計/水位計端よりも低い位置にあると推定されている。

解決すべき課題

PCV 内水位設定の考え方、止水の可否及びPCV(D/W部)からの冷却水直接回収システム等、具体化していく必要がある。
燃料デブリ取り出し時の耐震性の観点からはS/C内水位を低く維持した方が望ましいことから、各号機ともに止水を実施しない場合はベント管付け根部までPCV 内水位を低下させることにより、S/C内への流水を抑えることを考慮する必要がある。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

廃炉・汚染水対策事業原子炉格納容器内水循環システム構築技術の開発 [資料1] [資料2]
廃炉・汚染水対策事業原子炉格納容器漏えい箇所の補修技術の開発 [資料]
廃炉・汚染水対策事業原子炉格納容器漏えい箇所の補修技術の実規模試験 [資料1] [資料2]

検討されている研究課題

特になし

資料

関連サイト