英知事業出身者の活躍

Vol. 1

墨田岳大Takehiro Sumita

2021年3月掲載

Profile
所属 日本原子力研究開発機構 廃炉環境国際共同研究センター
燃料デブリ研究ディビジョン 燃料デブリ科学グループ
経歴
2019年4月 - 現在 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 研究員
2019年3月 東京工業大学物質理工学院 材料系 原子核工学コース 修了
2019年3月 日本学術振興会リーディング大学院「ACEEES」 修了
2016年3月 東京工業大学大学院 理工学研究科 材料工学専攻 修了
2014年3月 東京工業大学 工学部 金属工学科 卒業
英知事業
採択課題
平成27年度 英知を結集した原子力科学技術・人材育成事業 原子力基礎基盤戦略研究プログラム 廃炉加速化プログラム、
採択課題:「沸騰水型軽水炉過酷事故後の燃料デブリ取り出しアクセス性に関する研究」、研究代表者:小林能直(東京工業大学)

現在の研究内容について
~燃料デブリの正体を解明する~

私は燃料デブリ科学グループの研究員として、福島第一原子力発電所過酷事故によって生成し、現在も破壊された炉内に残存する“燃料デブリ”に関する研究に従事しています。燃料デブリとは“溶けた核燃料や金属材料(被覆管・構造材)、コンクリートなどが高温で混ざった後に冷えて固まったもの”です。世界中の研究者が、高度な専門性と知恵とアイディアを活かし、廃炉研究を進めています。私もそんな研究者の一人として、日々実験室で、原子炉に使われる材料を高温で溶かすなど、燃料デブリの正体(性質やどうやってできたかなど)を解き明かそうとしています。

居室での写真
グループの研究者と議論しながら、それぞれの研究を進めています。
機構での実験風景
粉末X線回折装置を用いて、燃料デブリの要素試料を測定しています。

学生時代の英知事業の活動について
~英知事業との出会い、原子力研究者としての道を歩み始めた~

学生時代は、福島第一原子力発電所過酷事故によって炉内の材料はどのくらい壊れたか、どのくらい材料同士が反応したか、ということをテーマに研究していました。具体的には、制御棒や燃料棒などの高温溶融物が、金属製の構造材料とどのように反応するか、についての実験を実施していました。日本国内では難しい、コールドクルーシブル(超高温を達成できる装置)を用いた燃料棒由来の高温融体の反応実験が特に印象に残っています。
英知事業に携わる以前(~修士課程)は原子力とは異なる分野で研究をしていたため、英知事業がなければ原子力分野に進むことはなかったと思います。また、博士課程での所属先研究室(小林研究室)は立ち上げたばかりの新しい研究室だったため、英知事業の予算で関連研究設備を整備することができ、研究を円滑に始めることができました。共同研究先(同課題参画機関)の東北大学や日本原子力研究開発機構の方々と活発な議論をする機会にも恵まれました。これらすべてのおかげで研究者としての今の私があると思います。

学生時代(英知事業の研究時)の実験風景
電気炉の中で金属材料を反応させています。
学位授与後の写真
お世話になった指導教員(小林能直教授、右)と秘書の池田さん(左)

今後の抱負
~人類の英知発展に貢献できるよう研究に邁進する~

福島第一原子力発電所からの燃料デブリの取り出しは人類が経験したことのない最も困難な作業の一つだといわれています。そのため、この廃炉には非常に優れた知恵と工夫が要求され、困難を克服する挑戦のマインドが試される特殊な課題として、私たちの前に立ちはだかっています。未知のフロンティア解明のため、また人類の英知発展に貢献できるよう研究に邁進したいです。

これから英知事業に携わる後輩へのメッセージ

~廃炉を完遂すべく、好奇心を持って~

世界中の研究者が、自らのセンスとアイディアを活かし、数十年かかるといわれる廃炉を完遂しようと努力しています。英知事業は大きな枠組みが定められていますが、その枠組みの中で、自分が満足の行く形でどのように研究を進めるかは、将来研究者となる皆様の工夫次第です。ぜひ廃炉を完遂すべく、好奇心を持って一緒に研究ができればうれしいです。