福島環境総合情報サイト(FaCE!S)を用いた成果発信
Interviewee
伊藤聡美Satomi Ito
研究の内容と目的
東京電力福島第一原子力発電所(以下、1F)の事故から10年以上が経過し、復興が進んでいるところですが、地域によってはまだ元通りとはいかない状況にも係わらず、年月の経過により人々の記憶の風化も懸念されています。国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(以下、原子力機構)として、これまで以上に研究成果を客観的に、専門的な知識を理解しやすい形で多くの人々に伝える必要があります。
そのため、原子力機構がこれまでに実施してきた環境動態研究や環境モニタリングの成果を一般の方々にも分かりやすく、総合的にまとめたWEBサイト「福島総合環境情報サイト」(通称FaCE!Sフェイシス)を通じて情報発信をしています。
FaCE!S(福島総合環境情報サイト)
放射性物質モニタリングデータの情報公開サイト
1Fの事故後、大気、森林、海や河川など様々な環境中に放射性物質が広く放出され、これまで原子力機構だけでなく、国、地方自治体、電力会社など、様々な組織が放射性物質のモニタリング調査を実施しています。「放射性物質モニタリングデータの情報公開サイト」では、それらの調査結果をまとめたデータベースを公開しています。以前は事前に作成された図や調査項目ごとのデータの表示のみで主に専門家向きでしたが、リニューアル版では地図をベースに、見たい場所の調査項目をピンポイントで複数表示できるように改善しています。「自宅の近くの線量はどれぐらいあるのか?」と知りたくなった場合、一般的な地図サイトと同様に拡大や縮小ができ、データの時系列表示やダウンロードも可能です。一般ユーザーの目線に立って、画面の見やすさ、操作のしやすさを追求し、利便性を高めました。
根拠情報Q&Aサイト
「根拠情報Q&Aサイト」は、これまでの研究で得られた知見や解析結果をQ&A形式で閲覧できるサイトです。冒頭の第1層は一問一答の簡潔なQ&A形式ですが、読み進めるに従って、より専門性が高い情報となるよう階層を分けていることが特徴です。第2層は図表や写真を用いて一般の方向けに、第3層は第2層より具体的で詳細な情報を、第4層は専門家向けに論文、報告書、関係機関のサイトのリンクを貼ることで知見の根拠となる情報まで示しています。つまり、利用者が欲しい情報量を自身で決定し取捨選択しやすい構造にしました。加えて、親しみやすくなるようイラストを多用し、内容ごとにテーマカラーで分類することで直感的に読みたい記事をクリックしやすくなるよう工夫しています。また、一般の方が利用しやすいスマートフォン版も公開しています。
廃炉技術や海外向けコンテンツを充実させ、ニーズを調査・研究に反映
今後は環境動態研究や環境モニタリングだけでなく、廃炉技術や廃炉に関わる情報、英語版の海外向けコンテンツを追加し、サイトの充実を図りたいと考えています。
そして、インターネット上だけでなく、シンポジウムや講演会、大学の学園祭、学生向け説明会、学生実習などでFaCE!Sを活用した調査研究の成果発信を進めています。この技術的広報活動を通じて、住民の生の声を始めとする様々な意見や要望に耳を傾け、そのニーズを調査・研究に反映させていきたいと考えています。