課題番号:デブリ-207
段階:Design
廃炉プロセス燃料デブリ取り出し
検討対象止める/冷やす/水素(安定状態の維持)
課題臨界管理

ニーズ

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① 精度の高い臨界評価を行いたい。

望ましい状態とその理由

現実的な臨界管理を実施するために、燃料デブリ臨界性についての情報を精緻化し、臨界の起こりにくさや影響度を精度高く評価する手法を整備することが望まれる。その際、保守性を持たせている部分を抽出整理し、過剰な保守性を排除して合理的な評価対象を検討することが望まれる。
燃料デブリ中の核種の挙動や体積に関する情報等も含めて総合的に臨界リスクを把握したうえで、燃料デブリ臨界管理の視点で、現状把握、監視、制御等の技術が整備されることが望まれる。

理想に対する現状

現状の希ガス(Xe-135)の濃度監視(濃度は臨界判定基準である1Bq/cm3に対して十分に低いレベル)や予想される燃料デブリの存在状態から、福島第一原子力発電所の燃料デブリでは工学的にみて臨界が起こる可能性は低いと考えられるものの、燃料デブリ取り出し時の燃料デブリの形状変化等により臨界になり得る条件を把握し、合理的で確実な臨界発生防止が必要である。過去、内部調査等や燃料デブリ取り出し時の各段階で得られる情報から、燃料デブリの臨界性に関して、臨界の起こりにくさや影響度を評価する手法の整備が進められてきた。それらの評価を行うため、臨界評価に対し影響の大きいパラメータに関する情報が内部調査や取り出し作業を進める過程で入手できるように計画される。
燃料デブリのU含有率が不明な場合において、事故前の燃料集合体中のU含有率である97~98%を用いて臨界管理や構外輸送の安全評価、安全対策を保守的に検討することが想定される。シビアアクシデントコードの計算結果やPCV内部調査の映像から、周囲の構造材と溶融・混合してU含有率は低下している可能性が高いが、評価に用いる値がないことから安全対策に過度の裕度を含ませることになる。

解決すべき課題

過度な保守性を排して評価するために、U含有率など評価するための指標を取得することが必要となる。
燃料デブリ取り出しの過程で得られる情報を基に、燃料デブリの臨界性についての情報を精緻化していく必要があり、臨界の起こりにくさや影響度を評価する手法の整備が求められる。臨界評価に対し影響の大きいパラメータに関する情報が、内部調査や燃料デブリ取り出しを進める過程で入手できるよう測定要求事項等を整理し、また、適宜情報を最新化することにより計画を見直し、臨界評価手法を整備していく必要がある。
放射線イメージャーおよび中性子イメージャーにより、簡易的に燃料デブリの位置を特定することができれば、PCV/RPVの内部調査及び燃料デブリ取り出し時において臨界管理の観点で保守的な対応を緩和し、効率的な燃料デブリ取り出しにつなげることが期待できる。未臨界度評価には、計測の耐放射線性と評価の迅速性が求められる。また、どの程度深い未臨界度まで評価する必要があるのかの「考え方」についても整理することが望まれる。

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出し工法・システムの高度化(臨界管理方法の確立に関する技術開発)(未臨界度測定・臨界近接監視のための技術開発) [資料]
R1年度英知燃料デブリ取出し臨界安全技術の高度化 [資料]
R3年度英知世界初の同位体分析装置による少量燃料デブリの性状把握分析手法の確立
R3年度英知非接触測定法を用いた燃料デブリ臨界解析技術の高度化

検討されている研究課題

特になし
② デブリ取り出し時の臨界管理システムを確立し、未臨界を維持したい(形状・質量管理含む)。

望ましい状態とその理由

燃料デブリ取り出し時の臨界を防止するために、臨界管理システムの運用方法(中性子束の変動による作業中止や中性子吸収材であるホウ酸注入判断基準等)を策定や、中性子吸収剤を投入した後の方策(水位低下やホウ素濃度維持等)を検討することが望まれる。

理想に対する現状

燃料デブリ取り出し初期においては、把持、吸引といった燃料デブリの形状を大きく変化させない方法や、推定反応度変化量に基づく加工量制限を実施、また、燃料デブリ取り出し規模を拡大していく段階や切削を行う段階においては、作業前の未臨界度測定や中性子吸収材の投入準備などの措置を講じることが検討されている。また、取り出し作業に伴う燃料デブリ周辺の中性子信号の変動量を確認して燃料デブリの臨界性を評価しながら取り出しを行うことで、設計による対応と運転員による監視と判断を組み合わせた、確実な臨界防止を行うことも考えられている。
既存の中性子検出器としては、核分裂電離箱、B-10 比例計数管、半導体検出器など用途に応じた多様な種類が存在しており、これらの特徴を踏まえつつ、中性子検出器を選定していくことが重要である。
臨界監視用の中性子検出器の要求仕様としては次が挙げられる。 ①作業期間に応じた寿命(集積線量(Gy))が維持できること  ②想定する装置に搭載できること(サイズ・重量、ケーブル径)、または作業場所に設置できること(サイズ・重量、ケーブル引き回し)  ③必要な検出効率(時間、精度) を満たすこと。
燃料デブリの臨界性が高いことが判明した場合に備えて、通常の燃料デブリ取り出し時に、五ホウ酸ナトリウムで満たす場合の必要ホウ素濃度の評価や設備成立性等の検討が進められ、漏えい時の環境影響や構造材であるコンクリートとの共存性が評価されている。また、PCV 循環冷却系への影響を局所的に留めることのできる非溶解性中性子吸収材についても開発が進められている。これまでに、基礎物性試験・耐放射線性能試験等を行い、非溶解性中性子吸収材の候補として、B4C 金属焼結材・B/Gd 入ガラス・Gd2O3 粒子、水ガラス/Gd2O3 造粒粉材が挙がり、これらの候補材について、燃料デブリ保管時の長期照射による収納缶健全性への影響、デブリ加工に対応した燃料デブリへの散布方法や散布後の効果が確認されている。2020 年度は循環水システムにおける、ホウ酸の調整設備の成立性の検討を行い、今後は中性子検出器と組み合わせた現場運用の技術開発が進められる。

解決すべき課題

中性子検出器の設置場所の検討、及び中性子束の変動による作業中止や中性子吸収材であるホウ酸の注入判断基準の策定が課題である。
PCV底部ペデスタル外、配管、水系フィルタ、廃液受槽等、循環水冷却系において回収しきれなかった燃料デブリ切削粉が蓄積している箇所における臨界の可能性もある。これらは、PCV ガス設備により臨界検知できるが、臨界近接監視の成立性等や、臨界リスクシナリオや評価に応じた対応検討が課題である。
未臨界度測定を行う場合、取り出し箇所周辺の局所的な中性子測定に加えて、短時間の中性子のゆらぎを捉える高い時間分解能とガンマ線環境下で微弱な中性子信号を測定するため高感度の検出器を選定する必要がある。これまでの検討では、主に高ガンマ線環境下(1000Gy/h を想定)における鉛遮へいの必要性から、装置への搭載性(サイズ・重量・電磁ノイズ対策等)と感度による運用法(測定時期・測定時間等)の検討が課題となっている。
加えて、臨界発生が懸念される場合には、緊急五ホウ酸ナトリウム注入によって未臨界状態に移行することとなるが、移行後において未臨界を維持する方法として、水位低下またはホウ素濃度維持の選択の判断基準の確立が課題である。
非溶解性中性子吸収材の導入に当たっては、PCV 腐食への影響や環境放出時の環境影響等の課題の見極めが必要である。
燃料デブリ取り出し箇所周辺の臨界近接及び臨界検知と、燃料デブリ取り出し箇所以外における燃料デブリの落下・粉体デブリの集積などによる臨界を検知するため、PCV ガス管理設備における臨界監視の即時性、検出器の高感度化を図る必要がある。既に測定しているXe-135 に加えてKr-87/88 を測定することによって臨界検知を早期化できる他、PCV 全体の未臨界度を推定できることが判明しており、今後、実機への適用について検討する必要がある。
燃料デブリ取り出し工法・システム側からの制約条件を踏まえつつ、中性子検出器の選定や最適化検討を行うことが必要であり、燃料デブリ周辺のガンマ線線量率・中性子計数率を把握していく取組や連続監視への対応も視野に入れ検出器の小型化等の現場への適用性の検討が求められる。また、様々な組成・性状の混在が予想される燃料デブリへの適用性を判断するために、技術の実証に向けた計画を策定し実証中であり、その結果を踏まえて、適用性について評価を行う必要がある。
燃料デブリ取り出し作業によって得られる燃料デブリ組成等に基づき、通常時の五ホウ酸ナトリウム注入の必要性の見極めが課題である。

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出し工法・システムの高度化(臨界管理方法の確立に関する技術開発)(再臨界を検知する技術開発、工法・システムの安全確保に関する最適化検討(臨界管理関連)) [資料]
廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出しに向けた技術の開発(燃料デブリ取り出し作業時の安全確保に関わる技術開発) [資料]
H30年度英知放射線耐性の高い薄型SiC中性子検出器の開発 [資料]
R1年度英知放射線耐性の高い薄型SiC中性子検出器の開発 [資料]
廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出し工法・システムの高度化(臨界管理方法の確立に関する技術開発)(未臨界度測定・臨界近接監視のための技術開発、臨界防止技術の開発)
廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出しに向けた技術の開発(燃料デブリ取り出し作業時の安全確保に関わる技術開発)
廃炉・汚染水対策事業安全システムの開発(液体系・気体系システム、臨界管理技術)
廃炉・汚染水対策事業燃料デブリの段階的に規模を拡大した取り出し技術の開発

検討されている研究課題

特になし
③ 万が一臨界が発生した場合の影響評価や、その後の対策を立てたい。

望ましい状態とその理由

燃料デブリ取り出し時等に万が一臨界が発生した場合の影響について評価し、適切な対策を検討・実装しておくことが望まれる。
また、万が一臨界が発生した場合に安全を確保するために、臨界発生時の挙動評価を通した作業員の安全確保対策の確立が望まれる。

理想に対する現状

燃料デブリ取り出し時等における臨界を未然に防ぐための臨界監視や臨界管理のためのシステム構築が進められている。ほとんどの作業で臨界の可能性はかなり低いとされているが、万が一再臨界となった場合に備えて、例えば燃料デブリが付着した構造物の取り出しの際には中性子吸収剤を容器に貯めておくなどの対策が検討されている。

解決すべき課題

万が一臨界が発生した場合の構造物や作業員への影響評価や、その評価結果に基づいた合理的な安全を確保するための考え方や具体的な対策検討が課題である。
臨界発生時は、通常使用は避けたいB(ボロン)を投入する方法が考えられるが未臨界とするためには相当量のBが必要となると考えられる。また、臨界を停止させるための作業を行う際にも、(臨界とは関係なく線量が高いエリアもあるため)容易にアクセスできる訳ではない点も考慮する必要がある。

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

R2年度英知遮蔽不要な臨界近接監視システム用ダイヤモンド中性子検出器の要素技術開発
R3年度英知非接触測定法を用いた燃料デブリ臨界解析技術の高度化

検討されている研究課題

特になし

関連する課題

資料

関連サイト