課題番号:汚染水-301
段階:Action
廃炉プロセス汚染水対策
検討対象水処理
課題効率的・効果的な水処理

ニーズ

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① 汚染水の浄化処理を行いたい。
時間軸:汚染水対策中期

望ましい状態とその理由

現在、原子炉建屋タービン建屋で発生した汚染水セシウムストロンチウムを取り除く「セシウム吸着装置」、塩分を分離する「淡水化装置」、トリチウムを除く核種を取り除く「多核種除去設備ALPS)」を経て浄化処理されている。この浄化処理を効率的かつ効果的に(経済的に)実施できることが望ましい。
また、ALPS処理水の一部では、トリチウム以外でも告示濃度限度を超える核種が存在するため、それら核種を効率的かつ効果的に(経済的に)除去できることが望ましい。
効率的かつ効果的に(経済的に)除去できる方法を検討する上では、水処理二次廃棄物の発生量低減や減容化・固化処理の容易さ等も勘案されることが望ましい。
なお、今後のデブリ取り出しや解体の方法も見据えた対策も望まれる。デブリ取り出しによって汚染源が変化することに伴い、汚染水の性状も変化する可能性に留意する必要がある。

理想に対する現状

1~3 号機原子炉建屋、プロセス主建屋及び高温焼却炉建屋を除き、建屋滞留水の処理が2020年に完了した。また、2022~24 年度に原子炉建屋滞留水を2020 年末の半分程度に低減させることを目指していたが、2022年度にこれを達成した。
ALPS処理水の海洋放出前に測定・評価する対象核種は、インベントリ評価と、建屋滞留水等の核種濃度の実測データ及び核種の物理・化学的な性質の考察を組み合わせて29 核種を選定している。
一方で、今後本格化する燃料デブリ取り出し時の汚染水の水質は、実際に取り出しが開始されるまでは明確にならない。除去が難しいコロイド状のα線放出核種の存在等含め保守的に設備仕様を設定する必要がある。
そのため、既存の建屋に滞留している汚染水による試験を継続し、候補とされている除去方法の知見を拡充し技術の開発を続けることが有用と考えられている。
二次廃棄物の処理技術については、溶解性α線放出核種に加えコロイド状のα線放出核種にも対応できる除去技術の開発、建屋に滞留する汚染水を用いた試験の準備、二次廃棄物処理技術の開発等が実施されている。

解決すべき課題

水処理に伴い水処理二次廃棄物が発生する。これらの廃棄物が少量になるような手法の開発が必要である。加えて、固化処理が容易な水処理方法の開発も必要である。
特に、吸着材はランニングコストが課題となっており、より良い吸着材の開発が望まれている。特にヨウ素に対する吸着剤の寿命が、他の核種を対象とした吸着剤の寿命より3~4倍程度短いという現状がある。また、ヨウ素は様々な化学形を取るため、吸着剤の選定が難しいという課題もある。
原子炉建屋滞留水量を 2020 年末の半分程度(約 3,000m³)に低減させることは達成されたが、原子炉建屋の床面近傍にはCsやα核種を含む高線量のスラッジが存在する。建屋水位を過度に下げると、「水の遮へい効果が低下し原子炉建屋内の線量上昇やダスト飛散等を引き起こし作業環境が悪化」、「KURIONやSARRY等のCs吸着装置に通常よりも数桁高い放射能濃度の汚染水が流入することにより浄化性能が著しく低下」といった課題が考えられる。
また、デブリ取り出し中(特に加工中)は、汚染水の性質(核種、化学形、等)が現在とは大きく変わると考えられるため、その点も考慮した水処理技術(例えば溶解性 α 核種の除去技術等)が求められる。
特に、ALPSの処理能力を超えるような核種の除去技術について、並行して検討・開発することが求められる。
燃料デブリ取り出しに向けた水処理設備の検討においては、既存の建屋滞留水の処理設備(SARRY、ALPS 等)とどのように機能分担して適正な構成にしていくかの全体像の検討が重要である。
燃料デブリ取り出し時には切削等の加工により多量の微粒子を含む汚染水が発生し、燃料デブリに含まれるα核種も微粒子やイオン、コロイドなど様々な形態で存在する可能性がある。こうした汚染水の水質は切削等の加工の方法に依存するため、燃料デブリ取り出し工法が確定していない状況では水質の想定が難しく、燃料デブリ取り出し時の水処理システムは幅広い水質、様々なα核種の形態に対応するために複雑な設備構成にせざるを得ないとの課題が生じている。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

廃炉・汚染水対策事業海水浄化技術検証事業 [資料1] [資料2] [資料3] [資料4] [資料5]
廃炉・汚染水対策事業土壌中放射性物質捕集技術検証事業 [資料1] [資料2]
廃炉・汚染水対策事業汚染水貯蔵タンク除染技術検証事業 [資料1] [資料2] [資料3]
R1年度英知化学計測技術とインフォマティックスを融合したデブリ性状把握手法の開発とタイアップ型人材育成 [資料]
R1年度英知ウラニル錯体化学に基づくテーラーメイド型新規海水ウラン吸着材開発 [資料]
R2年度英知革新的水質浄化剤の開発による環境問題低減化技術の開拓
廃炉・汚染水対策事業安全システムの開発(液体系・気体系システム、臨界管理技術)
R3年度英知中赤外レーザー分光によるトリチウム水連続モニタリング手法の開発

検討されている研究課題

特になし
② 高塩分濃度汚染水を効果的に処理したい。
時間軸:汚染水対策短期

望ましい状態とその理由

汚染水の浄化工程では、「淡水化装置」にて塩分を分離しており、その結果として高塩分濃度汚染水が発生している。これを効率的かつ効果的に(経済的に)処理できることが望ましい。

理想に対する現状

タンク内未処理水(濃縮廃液)は、既存の水処理設備では容易に処理することが 困難であることから、処理方針等を検討し処理を実施する、とされている。

解決すべき課題

高塩分濃度汚染水にはNaイオンとClイオンが大量に含まれており、ゼオライト等による吸着性能が低下するため、効率よく吸着できる吸着材の開発が必要となる。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

R2年度英知革新的水質浄化剤の開発による環境問題低減化技術の開拓

検討されている研究課題

特になし
③ 将来的な水処理環境改善を見据えた水処理体系を最適化したい
時間軸:汚染水対策中期

望ましい状態とその理由

将来(燃料デブリの取り出し工程や長期に亘る作業)も見据えて、最適な水処理体系を構築することが望ましい。より安定的な汚染水対策の在り方や各設備のより適切な維持・管理を考慮する必要がある。

理想に対する現状

汚染水対策の効果維持のため、陸側遮水壁やサブドレン設備、既存の水処理設備(SARRY、ALPS等)等の定期的な点検、更新を確実に行う必要がある。
さらに将来的には既存の水処理設備(SARRY、ALPS等)や冷却水は不要となっていること、地下水流入量がほぼ0になっているなど、状況が大きく変化することが想定される。

解決すべき課題

経年変化に伴う設備機能の低下、材料劣化や自然災害で生じる配管の損傷等様々なリスクを想定しながら、現行の地下水流入抑制対策を継続する維持管理・設備更新を行う。
また、汚染水のアウトリーク防止を前提としてインリーク抑制策も取られた汚染水対策工法を確立しつつ、燃料デブリ取り出しのための構築物設置や周辺施設解体期間中の汚染水管理を含めた対策をとる。
全体として、安全性向上、コスト低減、廃棄物発生量低減等の観点で最適化・効率化することが重要である。

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

R2年度英知革新的水質浄化剤の開発による環境問題低減化技術の開拓
東京電力ホールディングス㈱福島第一原子力発電所の廃炉のための技術戦略プラン 2024、原子力損害賠償・廃炉等支援機構、2024年 9 月 27 日https://dd-ndf.s2.kuroco-edge.jp/files/user/pdf/strategic-plan/book/20240927_SP2024FT.pdf

検討されている研究課題

特になし
④ タンクや建屋内に残ったスラッジを遠隔技術で効率的に回収・処理したい
時間軸:汚染水対策短期

望ましい状態とその理由

タンク内や建屋内をドライアップした際に底部にスラッジ等が残るが、これらは迅速かつ効率的に回収することが望ましい。
迅速な回収は、津波が来た際の流出防止、ダスト飛散防止につながる。

理想に対する現状

現在、プロセス主建屋、高温焼却炉建屋の地下階には建屋滞留水が貯留されているが、東京電力は2024 年度から建屋の床面露出に向けた水位低下を行うことを目標としている。これを実現するためには、プロセス主建屋、高温焼却炉建屋の地下階に設置された高線量のゼオライト土嚢への対策と、地下階への貯留に代わる滞留水一時貯留設備の設計が進められている。
滞留水一時貯留設備は、建屋滞留水の受入、セシウム吸着装置(KURION,SARRY,SARRYⅡ)を安定稼働させるための滞留水バッファ、各建屋滞留水の濃度平均化、スラッジ類の沈降分離の機能を引き継ぐ。この設備は、プロセス主建屋の4階に設置される予定である。
プロセス主建屋、高温焼却炉建屋ともに地下階には、事故後まもなく設置されたゼオライト土嚢が高線量状態で存在しており土嚢の表面最大線量は約4,400mSv/h と極めて高線量であること、また活性炭の土嚢も存在することが分かっている。
これらの地下階を床面露出した場合、水遮へいがなくなることで、地上階の開口部についても線量が大幅に上昇することが予想されている。
現在、これらゼオライト土嚢の回収工法が検討されている。具体的には、「①集積作業用ROVを地下階に投入し、ゼオライトを吸引し、集積場所に移送」「②集積されたゼオライト等を容器封入作業用ROVで地上階に移送後。建屋内で脱塩、脱水を行い、金属製の保管容器に封入し、一時保管施設に移送」が計画されている。

解決すべき課題

特に、効率的に回収するだけでなく、併せて除染もでき、回収物は焼却もできると良い。例えば、遠隔で床に樹脂やストリッパブルペイント等を撒いてはがすことで、これらを実現できる可能性がある。この際、樹脂等の散布剤には、耐放射線性が求められる。また、撒いた樹脂等で水路が潰れるといったことがないよう、留意することが必要である。
スラッジには高濃度のCs-137も含まれるため、除去方策については作業員の被ばく線量低減対策やメンテナンス性、二次廃棄物の観点からの検討が必要である。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

R2年度英知革新的水質浄化剤の開発による環境問題低減化技術の開拓

検討されている研究課題

特になし

関連する課題

資料

関連サイト