処理や処分技術の検討に必要な放射性核種の分析
Interviewee
二田郁子Ayako Nitta
博士(理学)
研究の内容と目的
福島第⼀原子力発電所(以下1F)の廃炉を進める上で、様々な廃棄物を安全かつ適切に処分していくことは重要な課題です。放射性廃棄物は通常の原子力発電においても発⽣しますが、1Fのような事故由来では性状(性質と状態)が複雑であり、多種多様な廃棄物が発⽣しています。それらは主に事故時に汚染した建屋瓦礫、植物、土壌、また、汚染水を処理することによって新たに生じる二次廃棄物など、様々です。それらの廃棄物を処分する為には、一つひとつの汚染状態を明らかにし、汚染レベルによって処分方法を変える必要があります。本研究は、1Fから生じた廃棄物を直接分析し、性状把握するためのデータとして蓄積していくのが目的です。
分析前の準備
1Fで採取された汚染水や廃棄物を分析するには、「試料の採取」「輸送」「試料の前処理」「分析」という工程が必要となります。まず、1Fの建屋内で採取した瓦礫や堆積物、建屋周辺の土壌、汚染水処理で発⽣する廃棄物などを採取し、分析施設(核燃料サイクル工学研究所 高レベル放射性物質研究施設など)へ輸送します。廃棄物が固体の場合は、液体試料として取り扱う場合もあるため様々な手法で溶解します。施設ごとに、使用できる試薬の制限がある、など多くの制約があります。それに合わせた試料の前処理(固体試料の溶解など)が必要であり、このような前処理方法を開発することも重要です。
試料の分析
試料の分析は、Ge半導体検出器やガイガー・ミューラー検出管、シンチレーションカウンタ、Si半導体検出器などで、γ、β、α線を測定し、含まれている放射性核種とそれらの濃度を調べていきます。複数の核種が混在している場合は、適切に測定するために化学分離が必要となり、核種の特性に合わせて抽出するなどの作業を行っています。様々な試料を分析する中で得られた結果については、廃棄物の性状把握や処理・処分方法を検討するためのデータとして活用できるように蓄積しています。
データの公開
分析した成果は、廃炉・汚染水対策チーム会合/事務局会議で報告されます。その後、報告書や論文、FRAnDLi(Fukushima Daiichi Radwaste Analytical Data Library)にて公開されます。FRAnDLiは1F事故廃棄物に関する分析結果のデータベースであり、廃炉に向けた活動や学術的な研究開発を促進するために有効活用されることを目的として原子力機構のWEBサイトで公開されています。
廃棄物の汚染のモデル化を進める
廃棄物の放射性核種の分析を進めることによって、どのような場所で、どのような放射性核種によって、どれだけ汚染されたのかの推定が可能になります。今後は、分析によって得られたデータ値に基づいて、汚染経路を想定し、廃棄物の汚染状況のモデル化を構築したいと考えています。