課題番号:デブリ-205
段階:Design
廃炉プロセス燃料デブリ取り出し
検討対象放射性物質の閉じ込め
課題閉じ込め機能の構築

ニーズ

※「望ましい状態とその理由」内のキーワードから福島原子力事故関連情報アーカイブへリンクしています(別ウィンドウで開きます)。キーワードでの検索となるため表示に時間がかかることがあります。
① PCV貫通部の補修・止水を行い、PCV内の水を安全に管理したい。

望ましい状態とその理由

PCV下部液相部の閉じ込め機能を向上させ、放射性物質拡散を防止するために、PCV貫通部の補修・止水技術を確立することが望まれる。
止水工事を適切に実施するために、各止水工法(ベント管止水、ダウンカマー止水、ストレーナ止水等)に対応した工事の現場適用性を明らかにすることが望まれる。
閉じ込め機能の向上を図るために、高線量環境下におけるPCVのリークパスを把握することが望まれる。

理想に対する現状

【全般】

閉じ込め機能の向上を図るために、高線量環境下におけるPCVのリークパスを把握することが望まれる。
PCV や原子炉建屋(トーラス室)には、貫通部の存在や震災による破損も確認されており、現在地下水との水位差を維持して、原子炉建屋側から原子炉建屋外の土壌側への放射性物質を含んだ汚染水の流出を抑制している。
より確実な閉じ込め機能を確保する観点から、PCV 下部補修等による止水の検討が進められてきている。これまでの検討結果からは、PCV 下部補修による完全な止水は難度が高いことが明らかとなってきているが、PCV 補修技術やその実規模試験の成果なども鑑みて、止水技術の適用による漏えい抑制と冷却水の循環・浄化系を組み合わせたシステムも含め、閉じ込め機能の在り方について検討を進めている。
1、3号機では、2021 年2 月13 日に発生した福島県沖を震源とする地震後にPCV 水位の低下が確認されている。なお、水中ROV による1号機PCV 内部調査を行う際に、水位が低い状態では堆積物等との干渉リスクが増加するため、一旦、注水量を増加して地震前の水位に上昇させ、調査終了後に増加させた注水量を戻し、現状の水位まで下げることを検討している。
デブリ取り出し工法として、閉じ込め障壁として船殻構造体と呼ばれる新規構造物で原子炉建屋全体を囲うことで、従来の冠水工法で課題とされてきたPCV上部止水に対応できる冠水工法(船殻工法)が検討されている。

【D/W止水】

閉じ込め機能の向上を図るために、高線量環境下におけるPCVのリークパスを把握することが望まれる。
これまで、PCV 下部液相部の閉じ込め機能の向上を目指し、トーラス室への冷却水の漏えいを抑制すべく、ベント管止水、ダウンカマー止水、ストレーナ止水等の方法が検討されているが、廃炉・汚染水対策事業による検討状況等を踏まえると、現状の止水技術の適用には困難な面があることが判明している。部分的であれ止水工事を行う場合には、ベント管止水工事中のPCV 内水位、PCV 循環冷却系、水位制御の検討が必要となる。また、S/C 脚部の耐震裕度が小さいことやS/C 以外の漏えい経路があること等から、PCV 内やトーラス室の水位制御との組み合わせによる循環冷却系の検討が進められている。

解決すべき課題

燃料デブリ取り出し作業による液相への影響の確認・調査の観点から、循環水系のモニタリングを行うとともに、既設の水処理設備での入口放射性物質濃度の低減を目的として、設備の追設、設置等を検討していく必要がある。α核種を含めた廃液の状況変化を監視・評価した内容を踏まえ、徐々に燃料デブリ取り出しの規模を拡大していくことが考えられる。
汚染拡大抑制の観点からは、汚染水がジェットデフからS/Cへ拡散することを防ぐため、ジェットデフへの閉止板設置、D/W 内への堰設置等による止水技術の確立が必要である。
型枠分割搬入方式(折り畳み式の型枠(メッシュ)にドライモルタルを投入する方法)によるS/Cへの汚染拡大防止方策では、モルタル硬化までの時間制約下での作業の成立性、メッシュ袋の最適な粗さ・材質の選定が課題である。
水中工法の可能性も見据え、特に、流水環境における止水技術が求められる。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

H27年度英知漏洩箇所特定とデブリ性状把握のためのロボット搬送超音波インテグレーション
廃炉・汚染水対策事業原子炉格納容器内水循環システム構築技術の開発(PCV内水循環システムの高度化のための技術仕様の整理、作業計画の検討及び開発計画の立案、PCV内アクセス・接続等の要素技術の開発・検証、PCVアクセス・接続技術等の実規模スケールでの検証) [資料1] [資料2]
廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出しに向けた技術の開発(燃料デブリ取り扱い技術の開発、燃料デブリ取り出し作業時の安全確保に関わる技術開発) [資料]
R3年度英知ジオポリマー等によるPCV下部の止水・補修及び安定化に関する研究

検討されている研究課題

特になし
② 気相系の閉じ込めを維持したい。

望ましい状態とその理由

デブリ取り出し時に発生する放射性微粒子の外部への拡散を抑制するとともに、α核種の存在を前提に作業員・公衆への線量影響を許容範囲に維持するために、建屋及びPCV気相部の閉じ込め機能を確立することが望まれる。その際、PCVを含めた閉じ込め機能の多重化も期待される。
負圧管理を維持するために、PCVの損傷状況等の現場情報を踏まえた負圧維持の技術的な成立性を確認することが望まれる。

理想に対する現状

【全般】

福島第一原子力発電所においては、原子炉建屋・PCV 等が水素爆発により一部損傷し、閉じ込め機能が低下しているため、燃料デブリ取り出し時においては負圧管理による動的閉じ込め機能の構築が検討されている。また現状では、水の放射線分解で定常的に発生する水素による水素爆発の防止や酸素による構造材の腐食防止(不活性化)の観点から、PCV 内に窒素を注入して窒素雰囲気に維持している。なお、この排気はフィルタによる放射性物質の除去と放射能測定を行うPCV ガス管理設備により放射性物質放出抑制が図られている。
燃料デブリを取り出すために原子炉内部にアクセスする事は、現状で維持されている閉じ込め状態に影響を与えることを意味し、取り出し作業での特殊な操作や保守の実施は、作業に従事する作業員の被ばくを増加させることを意味する。
1 号機のPCV 内部調査に向けたX-2 ペネ内扉の開孔作業時にはダスト濃度変化(2019 年6 月、作業監視用のダストモニタが管理値に達した)が確認されている。この時は、切削量を制限した上で作業を実施するとともに、得られたダスト拡散特性に関するデータを基にピーク濃度を抑制した切削の実施や新たな作業監視用ダストモニタの追加等の対応が行われた。これを踏まえ2号機では、堆積物の低圧水洗浄、ペネ出口へのスプレイカーテン及びPCV 内圧力低下の対策の準備を進めている。

【PCV内負圧管理の実現性の見極め】

PCV 内を負圧に維持するためには、PCV 損傷状況に応じた排気能力が必要となる。現時点においては、損傷箇所の特定には至っていないものの、実機における窒素供給量とPCV 圧力変動のデータを基に排気能力を設定している。

【二次閉じ込め機能の必要性】

負圧管理による一次閉じ込め機能が喪失し、閉じ込め境界から放射性物質が漏えいした場合に備え、既存の原子炉建屋に建屋カバー又はコンテナを設置し、原子炉建屋を微負圧に管理して放射性物質を回収処理する二次閉じ込め機能の必要性検討が進められている

解決すべき課題

【全般】

周囲への影響が増加する可能性も想定し、PCV 内を均圧化ないし負圧化することによる閉じ込め機能の構築に加え、二次的な閉じ込め機能の必要性について検討していく必要がある。
PCVの気相部の漏洩を感知することができれば、PCV内の放射性物質の外部への漏洩を抑制・防止することができ、さらに漏洩部を補修等によりふさぐことができれば、より放射性物質の外部漏洩のリスクを低下させることができる。その際、PCV外側近傍の空間線量率が非常に高く人が近寄れないこと、多くの狭隘部が存在し人や機器が入り込みづらいこと、PCV外壁面が非常に複雑な形状をしており無数の配管が貫通していること、等を考慮した技術が求めらる。このことは、今後、燃料デブリの取り出しを行う上においてより一層重要となる。

【PCV内負圧管理の実現性の見極め】

内部の温度上昇や排風機の停止等の異常事象によるPCV 内部の圧力上昇への備えとして、余裕を持った差圧の設定が必要となる。
必要に応じてPCV 上部の補修が検討されることとなるが、高線量下での作業となるため遠隔作業ないし作業員の被ばくが伴うなどの困難が存在する。現場条件を踏まえたPCV 内の負圧維持の技術的成立性を、燃料デブリ取り出し時に得られた情報も踏まえて見極めることが課題である。

【二次閉じ込め機能の必要性】

原子炉建屋は保有する体積が大きく、また事故による影響から気密性が低下していることも考えられるため、負圧を維持する場合には大規模な排風機が必要となると考えられる。そのため、今後得られるダスト飛散の傾向把握等の結果を踏まえながら、二次閉じ込め機能として必要な機能の見極めと技術開発を進めていく必要がある。

参考文献

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出し工法・システムの高度化(閉じ込め機能に関する技術開発、燃料デブリ由来のダストの捕集・除去に関する技術開発、工法・システムの安全確保に関する最適化検討) [資料1] [資料2]
廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出し基盤技術の高度化(燃料デブリの拡散防止に係る技術開発) [資料1] [資料2]
廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出しに向けた技術の開発(燃料デブリ取り出し作業時の安全確保に関わる技術開発) [資料1] [資料2] [資料3]
R2年度英知α/β/γ線ラジオリシス影響下における格納容器系統内広域防食の実現:ナノバブルを用いた新規防食技術の開発
廃炉・汚染水対策事業燃料デブリの取り出し工法の開発(大型構造物取り出し及び搬送時における汚染拡大防止隔離技術の開発)

検討されている研究課題

特になし
③ 漏えいを検知したい。

望ましい状態とその理由

閉じ込め境界から放射性物質が漏えいした場合に備えるために、放出濃度及び放出量を定常的に測定管理(モニタリング)し、予期せぬ漏えい等の異常事態が発生した場合に迅速に検知することで、影響緩和策を講ずることが望まれる。

理想に対する現状

東京電力では福島第一原子力発電所の敷地境界及び建屋周辺で放射線量のモニタリングが実施されている。

解決すべき課題

負圧管理に伴う排気の管理においては、燃料デブリ由来の核燃料物質等を含むおそれのある気体廃棄物中の放射性物質について、放出濃度及び放出量を測定管理することにより、施設周辺の公衆に対する線量基準以下に維持されていることを確認する必要がある。
燃料デブリ由来のα線β(γ)線放出核種を評価対象に加え、燃料デブリ取扱作業中において定常的に監視測定を行い通常の変動幅をあらかじめ評価しておくことにより、漏えい等の異常事象を早期に発見して適切な影響緩和策を講ずることができるようにし、作業員及び環境への影響を防ぐ必要がある。

(参考)関連する研究課題

実施されている研究課題

廃炉・汚染水対策事業燃料デブリ・炉内構造物の取り出し工法・システムの高度化(燃料デブリ取り出しに伴うα核種モニタリングシステムの検討) [資料1] [資料2]

検討されている研究課題

特になし

関連する課題

資料

関連サイト